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歯周病と糖尿病の関係 (岡山大学西村助教授)
2006.09.03
[ 歯周病と糖尿病 ]
歯周病は、歯の周囲のハグキなどの組織に細菌が感染して起こる慢性的な感染症です。歯周病は以前から、糖尿病の合併症の一つと言われてきました。実際、糖尿病の人はそうでない人に比べて歯肉炎や歯周炎にかかっている人が多い、という疫学調査が複数報告されています。
なぜ、糖尿病の人は歯周病になりやすいのでしょうか。まだこの詳細な仕組みは解明されていませんが、血糖値が高い状態が続くと、体の免疫機能が低下してさまざまな感染症にかかりやすくなったり、糖分を多く必要とする歯周病菌が増殖しやすくなるためではないかと考えられています。
さらに最近、歯周病になると糖尿病の症状が悪化する、という逆の関係も明らかになってきました。つまり、歯周病と糖尿病は、相互に悪影響を及ぼしあっていると考えられるようになってきたのです。
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この関係が明らかになってきた背景には、歯周病が、糖尿病だけではなく、その前段階と言える「肥満」とも密接な関連があると分かってきたことが挙げられます。ある調査では、肥満の人に歯周病が多いということも報告されています。
肥満の人の内臓脂肪には「TNF-α(腫瘍壊死因子)」という物質がたくさん発現しています。この物質は、白血球の一つ、「単球(マクロファージ)」からも分泌されて、炎症反応を活発化させるのに重要な役割を果たしていることが分かっています。
つまり、肥満の人は、常に体内が炎症状態にあると言えるのです。こうした場合に何らかの感染症にかかると、さらに全身の炎症がひどくなるとみられています。歯周病も感染症なので、より炎症が悪化するというわけです。なぜこうしたことが起こるのか、はっきりとは分かっていませんが、私が診ている患者さんの中にも、「風邪のときにハグキの腫れがひどくなるようだ」と話す人もいます。
歯周病菌が、歯とハグキの間の溝である「歯周ポケット」から簡単に血液中に入り込んでいくことも大きな問題です。歯周病菌が血液中に多量に存在すると、致命的な感染症を起こすこともあります。
それに加えて、歯周病菌の死骸が「内毒素」と呼ばれる多量の毒素をまき散らすことが、血糖値にも悪影響を及ぼします。血液中の内毒素は、脂肪組織や肝臓からのTNF-αの産生を強力に推し進めます。TNF-αは、血液中の糖分の取り込みを抑える働きもあるため、血糖値を下げるホルモン(インスリン)の働きを邪魔してしまうのです。
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インスリンの働きが悪くなると、血糖値が下がりにくくなります。つまり、歯周病も肥満も、TNF-αの分泌を活発にすることで血糖値のコントロールを悪化させ、結果的に糖尿病の発症につながる可能性があると考えられるのです。
実際、私たちのグループで、歯周病を合併した糖尿病の患者さんに、抗菌薬を用いた歯周病治療を行ったところ、血液中のTNF-α濃度が低下するだけではなく、血糖値のコントロール状態を示すHbA1c値も改善するという結果が得られています(図)。
ただし、覚えておいていただきたいのは、現在の歯周病治療は、その進行を抑えることしかできないということです。歯肉炎と呼ばれる状態であれば、口腔ケアによってハグキを元の状態に戻せますが、歯周炎になってしまうと、ハグキの状態は元には戻りません。
歯周病菌は歯周ポケットと呼ばれる歯とハグキの間の溝にはびこるので、薬を飲んでも薬剤はなかなか歯周ポケットに出て行きません。したがって、予防に努めることが重要です。口腔ケアも自分一人できちんと行うのは難しいと言われています。このため、健康な人でも、半年に一度は歯科医を受診し、歯のケアを受けるようにしてください。

金属アレルギーについて
2006.09.02
[ 金属アレルギー ]
人類は太古から装飾品として、あるいは権力の象徴として金属を身につけてきました。しかしそれらの多くは金を主体とする貴金属でした。金はイオン化しにくいという点では安全性の高い素材です。しかし、現在歯科治療で用いられる合金の金含有量は少なく抑えられており、パラジウム、銀、銅、ニッケルなど多様な元素を含んだ合金が使用されています。これらの合金の大量使用は人類史上例のないことで、長期的な安全性を注意深く見守っていく必要があります。
しかし、私たちは飲料水や食品の重金属汚染には敏感ですが、口の中の金属には意外に無頓着です。口の中の金属はイオン化して溶け出しやすく、唾液、口腔細菌、血液などのタンパクと結合して抗原性(アレルギー性)を持つようになります。その結果、皮膚炎や肌のシミ・しわなどを生じるようになります。
また、口の中の金属は帯電しやすく、ガルバニ電流と呼ばれる微弱電流を生じて、脳活動を混乱させたり、頭痛や関節痛を憎悪させたりします。口の中の金属によるアレルギーの危険性はピアスやネックレスによる感作によって発症しやすくなりますが、発症しない場合でも長い期間にわたる金属の体内蓄積によって身体的リスクが増大します。
現時点で最も懸念されていることは、口の中の金属によって免疫力が低下し、老化や発癌が促進されてしまうのではないかということです。 しかしながら現実問題として、歯科用合金を全く使用しない歯科治療は困難ですから、患者さんの体質に合わせた慎重な素材選択が必要になります。セラミックはもっとも安全であり、チタンも安全性の高い材料です。失われた歯を回復する場合には、費用の点を別にすればチタン製インプラント(人工歯根)とセラミックの人工歯冠が安全な選択といえます。
一般的に部分入れ歯やブリッジは金属を使用せざるを得ないのですが、ファイバーやジルコニアを使用したブリッジやプラスチックのツメを使用した部分入れ歯が開発されています。最も重要なことはいうまでもなく、虫歯や歯周病を防ぐことです。最近の予防歯科は急速に発展しており、虫歯菌や歯周病菌の除菌法が実用化されています。歯の病気や金属アレルギーが起きる前にきちんとした予防歯科のプログラムを受けることが大切です。

